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toiee Lab のあゆみ

2020年、10月12日時点での「意識」「認識」で、これまでの歩みを綴ります。私たちは、キラキラした実績を積んできたチームではなく、何度も失敗し、諦めかけたりしながら、それでも、もう一度と歩んできたチームです。

書き手は、亀田です。

対話に導かれて歩んできた

私(亀田)は、縁があって大学で授業を担当していました。研究者の道を辞めて起業を選びましたが、お世話になった先生に「大学との接点を持っておくといい」ということもあり、講師をしていました。

担当していた授業では、社会にいる私だからこそできること、伝えられることを伝える授業をしていました。おそらく、学生から見たら「他にはいない、変わった先生」だったのだと思います。

進路、学業、将来について相談してくれる学生が多くいました。

例えば、「政策創造学部にいるのに、本当はデザインが興味がある。大学を辞めてチャレンジすべきなのか?」という生徒には、

「焦っていきなり変化しなくていいよ。まずは、目の前の政治、行政について楽しんで学んでみたらどうだろうか?行政やNPOの知識がデザインと交わって何かできるかもしれない。デザインについては、独学してもいいだろうし」

などと、常に「正しい道はなく、自分の周りを見て、今できることを楽しみ、学ぶ姿勢」を伝えてきました。

このような中、学生と「放課後に、お茶をしながら、ダイアローグ(対話)」して、学ぶという小さな勉強会が発足しました。

これが、 toiee Lab の前身です。

原点は、このダイアローグをする姿勢にあると感じています。toiee Lab は「対話」によって導かれてきたと、確信しています。

放課後のお茶会での発見

放課後は、なんの話をするでもなく、私が「偉そうに講釈を垂れる」わけでもなく、ダイアローグ、問いをたて議論するというものでした。

例えば、P.F. ドラッカーの「イノベーションと起業家精神」を手に取り、

  • イノベーションと、イノベーションじゃないものは何か?
  • その境界ってなんだろうか?
  • 具体事例を並べて、比較してみたら、どうなるだろうか?

など、問いをたて、学ぶこと、みんなでいろんな意見を交わして、自分の意見に固執せず、耳を傾け、現れてくるものに注意を払うような学びの場を行いました。

この中で、私たちは

  • 様々な問いをたて、探求する楽しさ
  • チームで多様な意見を出して、それらを起点にして学ぶ楽しさ、深さ

こう言ったものを再発見していきました。

学生たちは、退屈だった「大学の授業が、実は問いの立て方次第で、興味深いものに変わる」という経験をしました。

なぜ、教育は、こんな形になっていないんだろうか?

そのうち、自然発生的に「なぜ、現代の教育は、問いをたてて、自分で探求できるようになっていないんだろうか?」という問いが生まれました。

大学の敷地のすぐ横の「カフェ」で、熱いダイアローグ、知的探究をする一方、大学の講義に戻ったら、受け身の体勢。質問をされることはあっても、根源的な問いをたてて、探究することがない授業に、学生たちが疑問を持ち始めました。

私は、大学、大学院、博士課程、研究職と進んだため、大学への印象は違いました。私は、大学の講義はほとんどサボって、自分で勝手に勉強し、研究室に所属してから、大学に足繁く通うようになった人間です。

私にとっては、「大学で学ぶこと = 問う、探究すること」でした。しかし、それは研究室での出来事であり、ほとんどの大学生は「受け身で授業をうけ、そのまま出てしまう」という現実を垣間見ました。

そんな中、自然発生的に、

「問いをダイアローグのような学びの場、ワクワクする学ぶ場所を自分たちで作れないだろうか?」

という問いが生まれ、それに導かれ、とにかく難しく考えず、やってみよう!ということで、プロジェクトを立ち上げました。

「問い」に導かれスタートしたので、「toiee(トイ)」と名付けました。

toiee の ee は「ニコニコマーク」です。特に意味はないですが、toi だけだと短いので、e に「点」をつけると、ニコニコマークに見えるので、それを2つつけて「チームで楽しく、学ぶ」という意味、遊び心を込めました。

もちろん、 entertainment education とか、 endless enhancement など、カッコつけた意味は考えましたが、私たちの原点は「楽しい学び」にあります。

そこで、 ee は「ニコニコマーク」です。

ダイアローグの手法を生み出す

まず、私たちが取り組んだことは「ダイアローグ」の手法を作ることでした。

深い対話になった時、良い議論ができて、思いもよらない答えを導き出すことを何度も目撃しました。例えば、AI(私の大学での専門は人工知能でした)に関するテーマで深い対話を導くと、専門家の私からみて、学生たちが独力で、非常に妥当な答えに辿り着くことがよくありました。

このことから、「深い対話」で、自分たちが経験したこと、見聞きしたことを明いっぱい活用し、それぞれの見解をお互いが深く理解することによって、多様な視点を統合することができ、そこから深い理解、新しい視点、アイデアが生まれることを何度も体験しました。

それらと同じようなことを過去に取り組んだ人を探してみると、デビッドボームという物理学者が「ダイアローグ」という書籍を出していました。

このダイアローグは、観念的で実践するには難しさがあったため、簡易にすぐに実践できる「ダイアローグ」として、ゼンローグというものを考えました。

ダイアローグを提唱したデビッドボームは、禅にも親しんでおり、たくさんのインスピレーションを得ていました。そこで、禅の根幹である「体感覚」「身体性」を積極的に活用する対話方法として考案しました。

「あるがまま(に話す、聴く)」 → 「判断保留」 → 「体感覚に意識を向ける」→「リラックス」というサイクルを回し続けること、それぞれのパート(移行も含め)を実践しやすい具体的な指示をカードにしたものをめくりながら、対話する形式がゼンローグです。

この対話方式を作り上げ、何度も、何度も使いました。

ゼンローグカード

そうやって、私たちは進んできました。しかし、常にできていたわけではなく、結果を出そうと焦ったり、コントロールしようとした時、対話を忘れてしまいました。そして、困った時に立ち返って、対話するという形で進んできました。

オフラインで、チーム学習

まず、私たちは、大学近くにスペースを見つけました。そこを自分たちで、解体し、知り合いの工務店の人に、素人では難しい場所だけを施工してもらい、残りは自分たちで行いました。

壁に砂鉄を含んだ塗料を塗りつけ、その上をホワイトボードペイントを塗り、スペース全体のどこでも書き込めるオープンスペースを作成しました。参考にしたのは、Make space という D-school の書籍です。

ホワイトボードの壁と志輝くん(亀田息子)

スペース作りと同時に、

  • そもそも、学習とは何か?
  • 人の学習とは、どのようなメカニズムとして定義できるのか?
  • そのメカニズムから考えると、どのように学ぶのが良いのか?
  • 以上から、今後の教育はどうあるべきなのか?

などの問いをたて、独自に「学習」を研究し始めました。その中で多くの出会いがありました。例えば、アルマクリエイションズが主催して、フォトリーディングで有名なポールシーリー博士による「アクセラメンツ」と出会いました。

アクセラメンツの受講(第1期)を通じて、「ラーニングファシリテーション」や「場」の重要性を、加速学習の分野の知見などから理解しました。また、トランスフォーメーショナルリーダーシップなど、組織学習で使われている「場」という考え形を体験しました。

それらの知見だけでは、どうしても「学習」を捉えきれなかったた中、私の専門であった人工知能の分野からも、学習・ラーニングの山を登ってみました。私の専門分野は、適応システム、カオス、複雑系、進化計算などです。現在主流となっている人工知能(ディープラーニング系)とは違い、人工生命、複雑の科学よりの知見です。

これらの知見、視座から眺めてみると、「学習は、生理的な現象であり、全体としては高度な適応システム(動的平衡を維持するもの)」として捉えることで、モヤモヤを解消することができました。

これらの知見をまとめたものが、toiee Labが採用する「FILM2学習理論」です。この理論によって、学習の状況分析、学習ファシリテーションの定義、ラーニングデザインなどに一貫性を持って取り組むことができるようになりました。

最初に目指したのは「ビデオで勉強会」スタイル

今(2020年)の私たちは、目の前の縁起、繋がり一つ一つを大切にし、地に足をつけて、ともに学ぶことを大切にしています。

しかし、当時は「世界を変える」や「教育を大きく転換する」などのビジョンを目指していました。今思えば、とても野心的で、ガッツがありますが、エゴ(かっこいいという自覚)があったかと思っています。

そんな当時、私たちは「ラーニング型の教材と、その流通網」を作ることを目指していました。その方法は、

  • ビデオ+αのシステムがファシリテーターの役割をし
  • インターネットを通じて最新の教材にアップデートされ
  • 集まった人たちで、勉強会を開始する

という方式でした。

私たちは、以上の構想が可能かをチーム内でテストしました。アート寄りの教材、IT教材、マネジメントに関する教材など、いくつか違うジャンルのビデオファシリテーション教材を作成しました。

ビデオ教材を使って社内テストを行う亀田

それらを流しながら、ワークショップを行うことで、学習効果があるのかをテストしました。テストは、非常に良好でした。そこで、Webサイトを立ち上げ、「実際に教材を販売してみて、テストする」を実行しました。

購入してくれた方々に、メール、電話を行いヒヤリング、追跡調査を行いました。そこで意外だったのは、

  • 教材を購入して、勉強会を開いてはいない
  • 教材の内容を勉強して、自分が主催でワークショップを開きたい

という要望でした。

「あなたが教えなくても、勉強会形式で実行してもらったら、それで効果がありますよ」

と伝えても、

「もし、何も起こらなかったら友達であっても迷惑をかける。だから、ちゃんと勉強して提供したいし、自分は先生だから、突っ立っているだけではなく、何かしたい」

ということでした。

一方で「勉強会」のために購入する人はいませんでした。考えて見れば、自分が勉強するために、他人を巻き込む必要があり、しかも実績もない。勉強会で、ワイワイやって、深い議論をするという体験を誰もしたことがない。

当たり前ですが、このような事実を理解しました。私たちは、ずっと「ダイアローグ」で始まり、其れれを通じて、toiee Lab を立ち上げて、歩んできました。私たちにとって、チームで対話して、そこから何かを生み出すというのは、当然でしたが、世の中一般では、奇異なことだと理解しました。

ラーニング・ファシリテーション・ワークショップを開く

このようなストーリーを何度も、何度も聞き、私たちは考えを改めることにしました。ビデオ形式を体験してもらって、簡単な司会進行を教えるというもので、それを練習するというものでした。

  • 写真ワークショップ
  • 動画ワークショップ
  • ワープロアプリ
  • Evernote
  • クリエイティブ・クエスチョン

など様々なビデオを作り、それらを体験してもらって、司会進行の方法をお伝えするということを繰り返してみました。

toieeの教材を使ってワークショップの練習を行う様子

そのうち、参加者の多くから「もっとラーニング・ファシリテーションそのものを学びたい」という要望があり、それに応えるためにも、そして「私たち自身の学びのためにも」ラーニングファシリテーション・ワークショップを設計しました。

金曜日の夜に3時間、土曜日、日曜日と3日間連続のワークショップです。

このワークショップでは、

  • ラーニングとは何か?
  • 良い学習者
  • ラーニングのパラダイム
  • 自分たちの人生の意味
  • 受容される経験、する経験
  • そこから創造性が発揮されること
  • メタ認知、全体性を感じる

などを体験でき、多くの人が「変容の涙」を経験した良いワークショップでした。これを毎月1回1年ほど続け、再受講してくれる方も多く、最終的には100人以上の卒業生を排出しました。

ラーニング・ファシリテーション講座

変わりゆく、目的意識

私たちは、変わり始めました。

ワークショップで共に議論した方々を通じて、私たちがやるべきことは「教育改革」や「世界を変える」ことではなく、縁あって出会った人々と

  • 共に学ぶことを通じて
  • お互いを理解しあったり、
  • 多様性の受容

を体現していくことだと、感じるようになりました。

ワークショップに参加した方々は、「ここで自分がされた、受容という感覚を、次は自分が提供して行きたい」と宣言してくださいます。

そのようなことが実現する「学びの場」を、どうやって作るか?それが課題だと感じ、少しずつ方向が変わって行きました。

といてら構想と、挫折

ラーニング・ファシリテーター・ワークショップを開催すると同時に、様々な教材を作りました。これらは、卒業生が各自の場所で「ワークショップ、新しい学びの場」をするために使うものです。

次々とワークショップを開発し、手渡して行きました。約1年経ったら、月額の利用料をいただくという計画をしていました。

1ヶ月に1回のワークショップを開催し、運営資金を稼ぎながら、教材設計を行い、卒業生に渡していく、そうすれば、1年後には「教材費」が収益母体になるんじゃないかと考えていました。

賛同してくれた方々と、ワクワクしながら、「全国津々浦々に、学びの場(といてらと読んでいました)」を作ること、現代の寺子屋を作ることを夢見て走っていました。

北は北海道、南は沖縄まで全国にといてら

実際は、参加者はみな「パラレルキャリア」で取り組むため、集客などの時間が作れません。toiee Lab も教材作りがメインで、集客などの仕組みを作れませんでした。

そこで、toiee Lab 自体が音頭をとって、全国一斉開催のイベントをしたり、様々なことを行いました。

今なら自明ですが、何かを学ぶ場合

  • 特定の場所
  • 特定の時間
  • 特定の興味関心

積極的に動いてくださる方もいらっしゃたのですが、なかなか身を結べませんでした。私たちも力不足で、様々な「良い発見」があったにもかかわらず、形にすることができませんでした。

その一つが「オンラインと、オフラインの融合」です。

  • オンラインの教材で、予習復習しておいて
  • オフラインのワークショップで思い切り探求する

などのブレンデッドラーニングの可能性を見出したのですが、ワークショップの設計、オンラインコースの設計、それらの販売ということに手が回らずでした。

意外に喜ばれたオンライン、しかし無視する

私たちは、「といてら(学びの場を全国津々浦々に作る)」を実現するなら、覚悟を決める必要があると考え、ラーニング・ファシリテーター・ワークショップの開催をやめました。

その時間を「自分たちが、といてらを運営し、ノウハウを作り、伝えていく」ことに使うことにしました。

本当に、たくさんの試行錯誤をしました。

  • 90min の短いバージョン
  • 1日の長いバージョン
  • 朝早く、昼、夜などの時間帯を試す
  • コワーキングスペースで開催する
  • 野外イベントをする

本当にたくさんの取り組みをしましたが、どれもパッとしませんでした。そんな中、運営資金を獲得するために、不本意にも(その当時は、そう思っていました)

  • オンラインコース

を作成し、販売しました。これが、本業を遥かに凌ぐ売り上げをもたらし、喜んでもらえていました。

しかし、これはあくまでも「副業」と考え、その成功を無視しました。他にも、WordPress関連のサービスや、レクチャーなども手がけました。いずれも「オンライン」です。

私たちは、「オンライン」の需要があるにもかかわらず、オフラインに固執しました。これには2つ理由があります。

一つは「これまでやってきた自己の活動を否定することになる」と思ったからです。チーム学習、多様な学び方を促進するなどは、オンラインコースでは実現できません。当時、今のように zoom.us は有名ではありませんでした。

もう一つは、野心です。ビジョナリーカンパニーなどを参考に「世界一を目指すなら、オンラインではなく、オフラインに絞り込むこと」が必要だと頭でっかちに考えていました。顧客にとっては、サービスが世界一かどうかよりも、自分のジョブが満たされることが重要です。しかし、当時は「野心」によって、顧客より世界一、オリジナリティーに目が向いていたと思います。

全員が退職

toiee Lab を試行錯誤する中、少しずつ、メンバーがやめて行きました。理由は2つです。

  1. 自分がやりたいことが見つかった
  2. 将来や給与の不安

toiee Labメンバーは、亀田の情熱に感化され「何かできるかもしれない」と思って、参加した人も多いです。夢を現実に変えるときに、様々な失敗、経験をすることで、気づくことがたくさんあります。

その中でも「自分は教育に情熱があるわけではない」ということです。気づいたメンバーは、辞めていきました。もちろん、引き止めることはなく、ゆっくりと話を聞かせてもらって、送り出しました。

プログラマー、Webマーケター、ライターなど様々な分野に転職していきました。

それと、toiee Lab は、「予想外の成功」と「計画の失敗」を続けていました。そして「予想外の成功」に導かれ、時々のダイアローグで浮かび上がったものに導かれて、方向を変えてきました。

非常に不安定な運営と、収支の状況でした。このような将来への不安、給与への不安もあり、少しずつメンバーは辞めていきました。

このような状況の中、私は決心をしました。

「理想とするものを、妥協せず、チャレンジしょう」
「それで失敗したら、全てを精算しよう」

そうやって、事業計画をたて、説明文章を作り、Slack(社内メッセージシステム)でシェアし、ミーティングの時間を設定しました。

今でも鮮明に覚えていますが、大学の授業が終わって、事務所に向かうとシャッターが降りています。いつもは、ガラス張りのスペースなのに暗いです。何があったのだろう、誰もいないのか?と思って中に入ると、大机に全員が神妙な面持ちで座っています。

「ミーティングの前に、話したいことがあります」

と告げられました。私は同意しながら「何人かは、チャレンジする前に、辞めるんだろうな。仕方がない」と思っていました。まさか、全員が辞めるとは思っていませんでした。

最初に口を開いたのは、「辞めるはずない」と思っていたメンバーです。彼は、これまでの経験の感謝を僕に伝え、それから最終的に「辞めたいと思います」と告げました。そして、次に「辞めるはずない」と思った人が口を開き、最終的に「辞めます」と告げられました。

私は、これまでの人生経験を振り返り、こんな時だからこそ「全力で傾聴しよう。口を挟まないでおこう」ときめ、一人一人の話を真剣に聞きました。そして、理解してもらえたと感じられるまで、「僕の理解では、こうだけど、この理解であっている?」と聞き返し、何度もターンを行い、全員が「スッキリするまで」話をしました。

最終的に、全員が「辞める」となりました。

私は傾聴し切った達成感もあり、そして、これが三年間の成績表だと理解し、何も言わず、

「わかった。畳むことにするよ」
「誰か、この大きなテレビいる?」
「プロジェクターは、子供のおもちゃにもらおうかなー」

と言いながら、ミーティングを終えました。

何も無くなったて、全てを諦めることにした

全員が辞めるとなりましたが、メンバーの保険料、今月の給与などは払う必要があります。そこで、全てを精算して、その支払いに充てることにしました。

これまで作成してきたオンラインコース、教材、学習理論のコース、音声セミナーなどを全部まとめて、販売することにしました。

全てを売って、最後は会社を閉じようと考えました。

そのあとは、私は執筆とコンサルティングやコーチング、趣味でプログラミングして仕事をしようかと考えました。

全員から辞めると言われたその日の遅く、子供達が寝静まった頃に、妻に今日の出来事を話しました。私は達観して、全部を受け入れたと思い込んでいましたが、これまでの経緯を話す中で、自分が感じて大切にしたいと思っていたことが、何一つ実現できないこと、諦めざる得ないことについて気づき、不意に涙がこぼれました。

ひとしきり、感情あらわにした後、なんだかスッキリしました。

仕方がない、全てを精算したら、それから考えよう。一人で始めて、良いと思ってくれた人が集まってくれたら何かができるだろう・・・と考えるようになりました。

その後、「辞めないだろう」と思っていた二人から連絡がありました。

「お客さんに迷惑をかけないためにも、他のメンバーの給与や保険を精算するでき、ひと段落するまでは手伝います。それまでは辞めずに手伝います」

と言われました。ありがたい反面、やはり「一緒にやることはない」と言われたことに、若干のショックを感じましたが、ありがたく手伝ってもらうことにしました。

新たな生命と、ティール組織

ある日、社会保険の請求書が届きました。メンバーも大幅に減ったため、保険料も大きく減っていると思ったら、予想の10倍の金額を請求されました。

社会保険事務所に連絡し、調べてもらった結果、どういう経緯かは、今になっては定かではありませんが、辞めるメンバーに対して「ボーナス」を支払う形で経費が計上されていました。しかも、決算を通し、「社員から借りている状態」となっていました。

当時の税理士に尋ねても、「一応確認しましたけど」と言われました。確かに、そのような確認をされた記憶はありました。しかし、こんなことになるとは・・・という感じです。

結局、メンバー全員のボーナスと、社会保険料、税金を全て支払うことになりました。会社の資産(教材、コース、その他)を、次から次へと販売し、精算に当てました。本来なら、3年ぐらいはたらかなくても十分にやっていける利益だったのですが、その全てがなくなってしまいました。

私は、toiee Lab の経営という点では、「赤点中の赤点」だったと痛感しました。これ以上ないだろう、、、というほど、何も残りませんでした。

さらに、この時「オンラインコース」がたくさん売れていることの事実は気づきませんでした。

・・・

しかし、捨てる神あれば、拾う神ありです。

こんな大変な時期に、私たち家族は、もう一人の命を授かりました。今、その第三子は、毎日笑顔を振りまいて、みんなを癒してくれています。人懐っこい子です。

また、この時期に、「有志だけで集まって、ラーニング理論勉強会」を開きました。これまで私の頭や、メモにだけあった考えていることを、全部シェアする勉強会を開きました。

ずっと支えてくださった小野さん、井餘田さんと東京で落ち合いました。

東京までの道中に読む本を探し、何気なく「ティール組織」を選びました。特に理由はなく、色が綺麗なことと、「今更経営の本を読んでもしょうがないんだけど、何かピンときたから」という曖昧な理由で選びました。

東京に向かう道中で、読み耽ってしまいました。そして、学習理論が示す道と、ティール組織が交差し、「一人じゃなく、もっと多くの人と、歩みたい」と思うようになりました。

面白いことに、井餘田さんも「ティール組織」を偶然読んでいて、勉強会の最中に、キーワードが現れて、盛り上がりました。

そして、「第2次 toiee Lab」をスタートさせることにしました。

第2次 toiee Lab で、オンラインワークショップが生まれる

さて、第二次 toiee Lab は、勉強会に参加してくださった方々と始めました。給与は発生しません(それぞれが活動して利益を出す)が、繋がって協力しようというものでした。

参加してくださった方に、私は支持することも、強制することもできません。

すると自発的に、いろんなことが起こりました。その中で興味深かったのは、zoom を使った「ワークショップ」です。新型コロナの問題が起こる3年も前のことです。当時、デビューしたばかりの zoom を使って、ファシリテーター同士で勉強会、読書会をしていました。

メンバーは皆、全国に散らばっています。集まることができません。しかし、周りには仲間がいないので、オンラインで繋がるしかありません。そこで、zoom ミーティングを使って、気軽な勉強会を始めました。

全国から参加するオンラインワークショップ

私も参加させてもらい、「オンラインって無視してたけど、すごい可能性があるじゃないか」と改めて感心しました。

そこから、少しずつ「オンラインの可能性をテスト」しました。しっかりと設計したワークショップを開催してみたり、動画の再生テストをしたりと工夫をしてみました。

そして、「オンラインで、何度もワークショップを繰り返し、チーム学習をする」という、スクラムと命名したワークショップ形式を開発し、実行しました。これは、

  • オンライン・ワークショップ
  • オンライン・ワークショップの録画をシェア
  • Slackで非同期コミュニケーションで教え合う
  • オンラインお茶会
  • オンライン自習勉強会
  • オンラインコース

を組み合わせたものです。

ここで出会った人の一部は、今でもお付き合いがあり、仕事も手伝っていただいています。またチームの一員になった方もいます。

やり切った時、「まさに、求めていたものに出会った」と感じました。

スクラムで出会った参加者の方とオフ会

第3次 toiee Lab へ

ただ、第2次 toiee Lab は、一枚岩ではなく、私たちの未熟さも相まって、裏で不満を言い合うようなことが起こりました。

なるべく「表で、ちゃんと話そう」ということを実行しようと思いましたが、そのような同意なくチームにしてしまったため、一旦解体することにしました。

ティール組織としての慣行を実行することもできず、理解し合うためのプロセスをスタートさせることもできませんでした。元々、雇用関係もなかったため、皆さんに経緯をお伝えし、一旦解体することにしました。

そして、「ティール組織について、理解がある」人、「toiee Labの核」を大切に思い、体現してくれている人だけを誘い、第3次 toiee Lab を再開しました。それが、現在のtoiee Lab です。

オンラインコースに、振り切ってみる

スクラムという形式を手に入れ、いよいよ、本腰を入れてみよう!と思った矢先、中心人物だった人が「別の会社で働きたい」ということで辞めることになりました。

スクラムという方法を手に入れたのに、実行できる人を失いました。ただ同時に、スクラムの進め方が悪く、ファシリテーターの負担も大きい割に、一部の参加者の方には不満の声をもらっていました。

つまり、積極的に参加できた方からは「すごくいい、最高」と言ってもらえましたが、一方で、時間が合わなかったり、出遅れたり、苦手意識があって「他の人と学ぶ場で、恥をかきたくない」という気持ちも相まって、ワークショップに参加しそびれた人からは、不満の声をもらっていました。

このような経緯もあり、今までやってこなかった「オンラインコース」に振り切ってみることにしました。

toiee Lab がスタートした時、Teachableというオンラインコースサービスを使ってみましたが、それほど使い勝手が良いとは思いませんでした。そこから数年が経って、Thinkficというサービスが台頭し(最近では、23億円の出資を受け、カナダのShopifyに並ぶ注目の企業になりました)ていました。

Thinkificを触ってみると、とても使い勝手が良く、これでオンラインコースを作ることにしました。いくつか試作し、実際に提供してみたところ、

  • オンラインコースで不満を表明してくださっていた方が、「そうそう、これが欲しかった。スクラムも悪くないけど、これがいい」

と大絶賛してくれました。

その後、しばらくオンラインコースに振り切って、仕事をしてきました。大学もコロナ禍でリモート授業をすることになり、

  • オンラインコース
  • リモート・ワークショップ
  • リモート自習勉強会、お茶会

という組み合わせで授業を行ったところ、かなり評判が良かったです。授業の感想を送ってもらうと、大多数の生徒に「感謝」をしていただきました。

好きなタイミングでコースで予習し、オンラインワークショップで理解を深める

このような経緯の中、私たちは「オンライン」に注力する決意をしました。toiee Lab発足時は、「オフラインでしか学べないことがある」と息巻いていましたが、今は「オンラインだからこそ、できることがある」と考えています。

オンラインに、オフライン(実際にあって、話して、議論して、受容する)の良さを持ち込み、

  • 時間
  • 空間
  • 年齢
  • 環境

の壁を乗り越えた、学びの場を作っていきたい、そのように考えています。

現在の私たちが注力していること

大きく分けて3つです。

  1. オンライン(リモート)を最大限活用すること
  2. 良いオンラインコースを作ること
  3. 良いオンラインの学ぶ場を提供すること

私たちのチームは、大阪、北海道、東京、広島、四国と離れています。いつもミーティングはzoomだし、情報共有は、 Notion と Slack を使っています。直接会えることは少ないです。それでも、とてもお互いに近くに感じています。

私たちにとって「オンライン」「リモート」は自然なことです。その利点を最大限利用して、今まで繋がることができなかった方々と繋がり、ともに学んでいきたいと思っています。

学ぶ方法は、

  • 独学を助けるサポートが充実した、オンラインコース
  • 一人では学べなかったり、きっかけが掴めなかったことにチャレンジするオンラインワークショップ

です。

また単に教材を消費することだけでなく、もっと繋がり、お互いのことを理解し合うことも大切だと考えています。そのためにも、

  • オンラインお茶会
  • オンライン座談会
  • オンライン自習勉強会

  • 同じ興味感心の人で、情報共有する場所

などのコミュニティ運営も行なっていきます。

私たちは完璧な存在ではありません。間違って、でも学んで、そして繋がって成長していく存在です。

あなたとも「先生」と「生徒」ではなく、
「企業」と「消費者」ではなく、

ともに学び、ともに成長し、学び・発見の喜びをシェアする「友」として付き合いたいと思っています。

以上が、私たち toiee Lab の歩みです。

2020年10月
代表 亀田学広

追伸:

以上は、私からの視点です。いろんなことがありましたが、その度に、周りの方々に支えてもらって、少しずつ、物事を形にできているという感覚があります。

これからも、亀のあゆみで進んでいこうと思います。

(水中では早いらしいので、生きる場所は選ぼうと思います。オンラインですね!)

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