「なぜ、それをやらないといけないの?」と聞かれたとき、どうすれば良いか?

ラーニング・ファシリテーション事例 (1)

Photo by pan xiaozhen on Unsplash

toiee Lab の教育の特徴は、ティーチング(一方的に教える、講義する)のではなく、ラーニング(自分で仮説検証、実験、探求、メタ探求型学習)を重視していることです。

良い学習状態を生み出すことで、難しい課題を「楽しみながら」探求し、自ら考える力や、応用力を身につけるための教育方法、それを裏付ける学習理論の構築を行っています。

私たちの教育の重点は、「良い学習プロセス」を生み出すことにあります。良い学習プロセスは、

の掛け算によって決まります。

今回は、上記の2つの柱のうちの一つ「ラーニング・ファシリテーション」の具体事例を紹介します。具体的には、

この2つの質問に対して、どうファシリテーションを行う必要があるか?を考えて行きます。

「なぜ、___ をやる必要があるのですか?」と聞かれたら・・・

ワークショップを進行していると、参加者から

「なぜ、____のワークを行う必要があるのですか?」
「これは、何の意味があるの?」

と、質問されることがあります。

例えば、「クイズの正解を30秒ジャストで出せるようにヒントを出すゲーム」をしようとしたとき、

「なぜ、こんな遊びをやるんですか?」

と聞かれることがあります。

このようなとき、どうしたら良いでしょうか?

【余談】面白いことに、このような質問をする人に限って、自分がファシリテーター、講師になると「何だよ、面倒な参加者だな」と思う傾向が強いです。なぜなら、、、後でわかります

「なぜ、___ をする必要があるの?」は、良い質問

多くの学校教育では、この「なぜ」を問題行動とまではいかなくても、不適切な質問とみなす傾向があります。例えば、学校や教師を信頼していない、権威を失墜させるものとして考える傾向があります。

しかし、toiee Lab では、このような質問を「良い質問」として考えています。

なぜなら、ラーニングを引き起こす観点からみると、学習者は学習対象について、自分なりの関係を構築することが、学習に良い影響を与えるからです。簡単な記憶実験でも、個人的な経験を結びつけるだけで、記憶が向上することが知られています。

このことからも、

「なぜ、___ をする必要があるのか?」
「___ は、どんな意味があるのか?」
「___ をすると、今後のワークでどんないいことがあるのか?」

などと質問を発展させていくことで、「自分なりの学ぶ意味」を持たせることに繋がります。

なるべく、自分で「仮説」を立てさせる

例えば、「なぜ、___ をする必要があるのか?」という質問に対して、先生側が

「・・・・という理由があります」

と簡潔に説明するのも良いでしょう。しかし、これでは「自分で考えたことになりません」。大切なことは、長い目で見たときに学習者の「メタ学習能力」をアップさせる取り組みをすることです。

そのためには、理由を説明するよりも、「自分で、理由の仮説を立てさせる」ように、ファシリテーションするべきだと考えています。

例えば、

などと、質問しても良いでしょう。

単に「不安から」質問しているだけの場合も多い

経験上、「なぜ、 ___ をする必要がるのか?」と聞いてくる場合のほとんどは、「単に不安」や「先に理由を聞いていないと安心できない」だけのことが多いです。

このような場合は、語弊がありますが「なんでもいいから、理由があれば良い」です。

例えば、

などと説明しておけば、「わかったような、わからないよな」「でも、ちゃんとしているんだろう」と思ってくれて、すんなりワークに入れることが多いです。

ファシリテーションに慣れてくれば、

を正しく見分けられる確率が上がります。しかし、あくまでも確率が上がるだけなので、

  1. ワークに「もっともらしい意味説明」をつける
  2. それでも質問されたら、「安心して質問できる雰囲気」を作って、質問を掘りさせげもらう

と、すれば良いと思います。

「それ、もう知ってます。学ぶ必要はありますか?」と聞かれたら・・・

ところで、「それ、もう知ってます。学ぶ必要はありますか?」と質問されることも時々あります。質問内容を裏返せば、

という内容です。

このような質問(意見、要望)が、出たらどうしたら良いでしょうか?

本当に知っている人とは?

まず、世の常として知っておくべきことは、「本当によく知っている人は、このような質問をすることはない」です。

「無知の知」とも通じますが、よく知っている人ほど、全てを熟知することはないと知っています。しっかりと物事を突き詰めているが故に、知性の限界を知っています。

その限界を知っているからこそ、謙虚です。

また良い学習者は、たとえ知っていることに見えても、「何か知らないことはないか?」と考えたり、「この状況で、学ぶことは何かないか?」と考えます。

したがって、上記のような質問をされた場合、殆どの場合、「相手の理解は中途半端」と思っておくと良いです。

ただし、「中途半端なくせに、このヤロー」と思う否定的な感情、拒否の感情を持つこととは、同義ではありません。ただ、そのような傾向があると知っておくだけで、目の前のその人は、どうだかわかりません。

さらに、もし知ったかぶりをしていたり、知っていると慢心していたとしても、それに対して、なんらかの判断(このひとは、無知だ。謙虚じゃない)などを下さないことが大切です。

必要性を説明するよりも、簡単な方法

では、「それ、もう知ってます。学ぶ必要はありますか?」と聞かれたら、どのように答えれば良いでしょうか?どのようにファシリテーションをすれば良いでしょうか?

よくある方法は、「・・・という理由で、必要です。だからやりましょう」というパターンです。ニーズを説明し、説得する方法がよく採られます。

しかしながら、もっと簡単で、ワクワクできる方法があります。

それは「期待を高める」ことです。FILM理論でも定義していますが、私たちの学習は「期待する結果」と「実際の結果」のギャップを埋めたいという感情が引き金の一つになります。そこで単に説得するのではなく、

「こんなことができるようになりますよ?」
「この先に、こんなことが待っていますよ?」
「すごくないですか、この____ は?」

といって、「やってみたい」「探求してみたい」「えぇ、なにそれ?」と興味関心を生み出すようなアプローチが大切です。

そうすれば、敵対することなく、「未知の発見に向かう同士」として、学習プロセスを進めていける場が生み出せます(生み出せる可能性が高まります)。

小学生の子供を相手にしていると想像する

私には、小学生1年生の子供がいます。もちろん、その友達も1年生です。彼らを相手に、説得を試みても、「えー、やだー。知ってるー。やりたくなー」っと、ブーブー言います。

では、どうするか?

前述したように、「やってみたい!」と思わせることに掛かっています。

相手が大人だからと言って、「真摯な態度」を求めるのは勝手ですが、学習に頓挫した分野では、誰しもが「駄々っ子」のような状態になっていると考えると、すんなりと解決策が生み出せます。

マインドセットをしっかりさせよう

ここまで、具体的なファシリテーション事例を紹介しました。しかしながら、これらは「方法(ノウハウ)」であって、「技法・技術(アート)」ではありません。現場で使って成果を出すには、暗黙知とも呼べる部分である、考え方、価値観、姿勢が大切です。

これらをまとめたものが、ラーニングファシリテーター・マインドセットです。

このLFTマインドセットから3つのことを導き出して、締めくくりたいと思います。

1. Great teacher inspires

ファシリテーターの役割は、何かの知識を与えることではありません。教えるのでもなく、やって見せることでもなく、「学ぶ心に火をつける(インスパイア)」することが必要です。自分が「ワクワクした体験」などをシェアしたり、様々な方法を試して「心に火をつける」ことが必要です。

「もう帰ってください」と言っても、まだ勉強しているような状態を作るには、インスパイアが欠かせません。

2. 判断を保留すること

私たちは、すぐに「良い」「悪い」、「好き」「嫌い」の判断を瞬時に行ってしまいます。この判断を意識して、保留することが大切です。保留するには、判断している自分を観察し続けることです。例えば、「・・・・って思ってるなー、私」と考えていることにラベルを貼ることで、判断を保留しやすくなります。

この判断を保留することは、観察眼を研ぎ澄ますことに繋がるだけでなく、相手を受容する状態を作ります。ファシリテーターのこの姿勢が、ほかの参加者の模範となり、受容する場づくりの鍵となります。

3. 権威を証明しようと頑張らない

私たちファシリテーターは「権威の象徴」ではありません。私たちが場を仕切る権限を有するのは、「一人一人の学ぶ意欲と、可能性を引き出し、お互いを理解しあえる場」を生み出すためです。その点においてのみ、権力を有します。

偉い先生としての権威を示すよりも、優先すべきことを優先する意識が大切です。

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